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経営戦略論・組織論を研究しているMKUのブログ。 書評やウェブ上の気になった記事などを載せていきたい。 私自身の思考トレーニングの側面もあるので、まとまりの良さよりも、ちょっとした「引っかかり」を中心に投稿を行っていきたいと思っている。



Monday, January 22, 2007

企業の成長とドメインの再定義(コスモス薬品の事例)

九州の郊外で、ドラッグストアチェーンを展開し、急成長をしているコスモス薬品に関する記事が、日経ビジネス2007年1月22日号(pp.52-57)に掲載された。

同記事によると、コスモス薬品には3つの特徴がある。

第一に、店舗展開をする商圏について、同社は市場の魅力度が高いが競合との競争を強いられる大商圏ではなく、規模は小さいものの確実にその地域の需要を取り込める小商圏を中心に店舗を展開している。小商圏を独占するために、同社の店舗は業界平均の4倍の600坪という広さで展開されている。
第二に、販売に関しては商品価格は特売やポイントサービスに頼らないエブリデイ・ロー・プライス(EDLP)方式で販売を行い、売り場に関しては、広々とした通路と商品の大量陳列によって、短時間で顧客が買い物を出来るようにしている。EDLPと独自の売り場設計により、特売の時だけ買いに来るような歪な来店ではなく、頻度の高い来店を促している。また、高い来店頻度によって衝動買いを誘ったり、特売を行わないことで売り場の問題点の明確化を図る取り組みをしている。
第三に、社員間に存在している企業文化で、店舗入り口にはグリーターと呼ばれる挨拶係兼、来店客サポート係が立ち、きめ細かなサービスを提供する。この他、3メートル以内の顧客には挨拶、5メートル以内の顧客には常に注意を払い、何かを尋ねられた際には小走りで駆けつける、などを徹底している。製品陳列作業などにも、常に効率性と現場での改善を徹底する文化が根付いている。

以上3つを見てみると、同社の戦略で価値を生み出しているポイントは、高い来店頻度にあると考えられる。そのためには、出店政策と顧客との信頼関係の構築が重要なポイントとして作用している。
第一点目の出店政策に関しては、企業ドメインを絞ることから生み出された出店政策による、差別化戦略が見て取れる。競争戦略の最も重要なポイントは、競合関係から生じる収益性の低下を招くような競争をしないこと、競争を避けることである。この出店政策は、これまでサービスが提供されてこなかった小商圏に出店することで、その地域における唯一のサービス供給者になることによって、収益性の低下を防ぐという差別化戦略が採られていると考えられる。この競争戦略上の意義の上で、さらに小商圏で競合が存在しないことによって、来店頻度を高く保つという効果が期待できると考えられる。
この戦略が具体化されたものが、第二、第三点目のEDLPと従業員のカルチャーである。EDLPを調達力がそれほど強力ではないと考えられる中規模チェーン店で展開できているのは、出店政策によるところも大きいとも考えられる。また、従業員による高効率かつ効果的なオペレーションとEDLPは、顧客との信頼関係の構築に寄与している。

しかし、同記事に寄ればコスモス薬品は、売上高が1000億円に達した現在、成長の壁に直面しているとのことである。そのため、新たに同社はドメインを広げ、九州全土にセブンイレブンと同じ密度の400店舗の展開を行うとしている。これによって、競合他社の進出を防ぎながら、供給業者への交渉力を高め、さらに、店舗間の在庫共有などのオペレーションコスト低減効果も期待できる。
新たな成長戦略へ打って出たコスモス薬品の今後は、旧来の戦略である競合を避けながら、高い来店頻度を保ち、収益性を確保し続ける、というポイントをベースにしながらも、新しい戦略のポイントであるオペレーションコストの低減につなげていけるかという点が重要になってくるだろう。店舗数の増加にオペレーションコストの低減効果が追いついてくれば、新たなステージに成長できると考えられる。

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